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成年後見人とは  ~ちゃんと知っていますか?後見制度~

2018年06月8日

成年後見制度とは
判断能力が欠けている人や、不十分な方に「後見人」「保佐人」「補助人」などの、代理人等を選任する制度です。判断力の状況に応じて、医師の診断書を参考に家庭裁判所が決定をします。
特に、今日は、判断能力が欠けている状態(認知症であれば、重度の状態)の方に、代理人である後見人を選任するケースについて、実際の事例をもとに説明します。

(事例:倉敷市在住Kさん、男性のケース)
Kさんは、最重度の認知障害により、家族のこともわからない状態になり、グループホームに入居されました。Kさんは、離婚した妻との間に2名のお子さんがありますが、ご家族は、別れた奥様の方で成長され、他県で、あまり往来はありません。
施設費は、Kさんの年金口座から引き落としになっていました。
Kさんの年金収入は、月11万円程度、施設費は月に17万円程度必要ですが、既に預金の残額が100万円をきってしまいました。他県にお住いのご家族も、Kさんとは疎遠で、経済的支援もできないとのことで、今後も関わるつもりもないと言います。また、ご家族はKさんが一人で住んでいた持家があるので、その持家を売却して施設費を賄えば良い、空き家で困っていたところだからちょうど良いと思っていました。
ご家族が、Kさんの持家を換金しようと不動産業者に出向いたところ、本人の判断力がないので売却は難しいと言われたので、売却相談にとり合ってもらえず、弊所に相談に来られたという経緯です。

ご家族は「疎遠で、空き家も大変だし、今後も関わる気はない」とのことで、家庭裁判所で第三者の後見人を選任してもらう手続きを進めました。申し立て手続きは、親族が行う必要がある為、ご家族に協力を仰ぎ、ご家族が申立人となっていただき、実際の書類作成などは弊所で行いました。
Kさんの後見人には、第三者の司法書士が選任され、ご家族は今後ことを後見人にお願いされました。後見人は、本人の収支などを再度しっかりと調べて、老後の生活費捻出のために、本人のご自宅を売却換金しました(居住用財産の処分の許可を家庭裁判所から受けたうえで)。ご自宅は、とても老朽化していましたので、建物に価値はないと見えましたが、それでも手元に600万円ほど入りましたので、何年か分の老後の生活費の見通しをつけることができました。

Kさんのご家族は、関わるつもりはないと言っていたのですが、後見人が財産管理や身上監護を行ってくれることと、懸念していた空き家の問題と老後生活費の心配が、少し楽になったこともあったようで、半年に1回は、墓参りの便で面会に来てくれるようになりました。
Kさんは、既に判断力が相当に難しい状態で、ご家族のことを分かっているかどうかも分かりませんが、やはり訪問者があることは嬉しい様子です。
ご家族の方も、懸念していた空き家の問題や、将来の生活費問題、さらに心配していたKさんが亡くなった際の連絡や供養の問題も、後見人がいることで安心して相談できるようになり、ストレスが軽減されたと言っておられます。

Kさんのように、離婚などを機に家族関係が予定外の展開になった方は多くいらっしゃいます。疎遠となり、事実上家族とはいえない状況にある家族の方にとって、知らない方の老後の財産管理などを要求されることが負担で、より疎遠になっていることもあるようです。

以前は、日本では戸主を中心とした家族で生活を1つとみることが通常でしたが、現代ではそのような実態がなくなりました。しかしいざという時には、縁遠い親族を追いかけて老後の看とりなどを引き受けさせる傾向が未だにあります。その負担を逃れるために、どんどんと疎遠になっていく、電話にも出ないということを見かけます。

家族の在り方の変化とともに、成年後見の利用も増えていくものと思いますが、未だ正しく制度を理解している方が少ないのが現状です。早く制度を利用することで、危険な空き家をつくることも予防できるし、財産価値がなくなる前に換金することも可能になります。判断力がなくなってしまうと、色々なことが放置され、ひどい場合には、適切な医療が受けられなかったり、適切な生活場所に入居することができない場合もあります。
誰でも歳をとり、だんだん関係者は少なくなるものですが、超少子高齢・核家族のいま、誰からも気が付かれずに亡くなるような人が出ないことを心から願っています。