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マメ知識「判断能力と遺言書」

2017年11月16日

★判断能力が低下していると遺言書が作成できないか?★

というご質問を受けることが多くなりました。それと反対に

☆遺言書が出てきたが、当時認知症であったので、あれは無理やり書かされたもので無効ではないか☆

というお話も聞くようになりました。

民法963条には「遺言をする時においてその能力を有しなければならない」

とされていますので、まったく判断力を喪失していれば、これは無効、というより不可能ですね。

しかし、やや判断力が低下気味の場合はどうなるのでしょうか。

 

民法962条には、遺言に関しては、後見人や保佐人の同意などは不要とされています。

民法961条には、満15歳に達した者は遺言をすることができる。

民法973条には、成年後見が開始された人でも、医師2名の立会により遺言をできる旨。

が記載されています。

このように、遺言に関しては「本人の最後の意思を尊重すること」が重視されて

15歳程度以上の能力があれば良いと考えられています。

 

実際に、軽度の障がいがある方や、高齢の方でやや物忘れがあるような方、裁判所で保佐人が選任されている方でも、遺言書を作成することは可能です。

最終的に、トラブルになってしまい、遺言が無効とされては、本人の最後の意思が尊重されないので、公証役場で遺言書を作成する場合には、公証人から、判断力がどの程度あるかを判断するための質問事項を織り交ぜた会話がされたり、任意に医師の意見を取り入れたりして作成されることが多いです。

また、グループホームなど、認知症であることを前提に入所する施設において、入所者の方が遺言書を作成される場合、入院中に病室で遺言書を作成される場合などは、「公証役場に出向く」という行動での意思表示の確認もできないため、準備の手配を行う私たち司法書士や、公証人もより慎重になる傾向があります。

本当は、そのように思っていたとしても身体の麻痺で署名ができない、口がきけない、体を動かして意思表示もできないという状態になってしまうと、どうしても意思表示が確認することができません。また、闘病中の家族に対し「遺言を作成してほしい」と言い出すことや回復を待ち望んでいる家族に対し、「遺言書を書きたい」とは言い出せないものです。

遺言書は、法的効力をもって、最後の意思表示をできる素晴らしい制度ですがやはり、できるだけ元気なうちに作成されておくのが望ましいと言えます。